アルバイトの交通費は給料に含まれる?課税の考え方と確認ポイント

「時給計ちゃん」運営チーム。アルバイトやパートで働く方に向けて、複雑な給与計算をサポートできるツールの企画と情報発信を行っています。労働基準法などに関する基本的なルールを分かりやすく解説します。
アルバイトやパートで働いていると、「交通費って給料に含まれるの?」と疑問に思うことがあります。給与明細を見ると支給欄に「通勤手当」や「交通費」と書かれているけれど、これは給料の一部なのか、それとも別物なのか——答えは「聞かれている文脈によって変わる」というのが正確なところです。
筆者自身、学生時代のアルバイトで初めて給与明細をもらったとき、「交通費って税金かかるの?」「扶養の計算に入るの?」と混乱した経験があります。調べてみると、交通費は「所得税では非課税」「社会保険では報酬に含む」「最低賃金では含まない」と、制度ごとに答えが違うことが分かりました。
この記事では、交通費の扱いが気になるアルバイト・パートの方に向けて、所得税・社会保険・最低賃金・扶養判定それぞれの文脈で交通費がどう扱われるのかを整理し、給与明細での確認方法まで解説します。
この記事のポイント
- 交通費(通勤手当)は給与明細の支給欄に載るが、月15万円以下の実費相当額は所得税が非課税
- 社会保険料の算定基礎(標準報酬月額)には交通費が含まれるので、保険料に影響する
- 最低賃金の算定基礎や年収の壁(所得税の扶養)の判定では交通費は含まれない
交通費は「給料に含まれる」のか?
結論からいうと、交通費(通勤手当)は給与明細の「支給」欄に載るため、広い意味では給料の一部です。ただし、所得税の課税対象としては分離されるため、「課税される給料」には含まれません。
この二面性が「含まれる?含まれない?」という混乱を生んでいます。文脈ごとの答えを先にまとめると、次の表のようになります。
つまり、「交通費は給料に含まれますか?」という質問に対しては、「明細上は含まれるが、税金の計算では含まれない。ただし社会保険料の計算には含まれる」というのが正確な答えになります。以降のセクションでは、それぞれの文脈を掘り下げて見ていきます。
この節の参考データ
- e-Gov「所得税法 第9条」 — 非課税所得の根拠
- e-Gov「健康保険法 第3条第5項」 — 報酬の定義(通勤手当を含む)
- e-Gov「最低賃金法施行規則 第1条」 — 最低賃金の算定基礎から除外される賃金
交通費が非課税になる条件と限度額
交通費が所得税で非課税になるのは、所得税法で「通勤のために通常必要な費用」として一定額まで非課税にすると定められているからです(出典: 国税庁タックスアンサー No.2582「通勤手当についての税務上の取り扱い」)。
電車・バスなど公共交通機関を使う場合
公共交通機関で通勤する場合、1か月あたり15万円までの通勤手当は非課税です。アルバイトやパートの通勤費で月15万円を超えることはまず考えにくいため、ほとんどのケースで交通費の全額が非課税になります。
非課税の対象となるのは「通勤のために通常必要な経路および方法」の費用です。たとえば自宅から勤務先まで電車で月8,000円の定期代を支給されている場合、この8,000円は全額が非課税です。
マイカー・自転車通勤の場合
マイカーや自転車で通勤している場合は、片道の通勤距離に応じた非課税限度額が定められています(出典: 国税庁タックスアンサー No.2585「マイカー・自転車通勤者の通勤手当」)。
※片道10km以上の区分は令和7年(2025年)11月の所得税法施行令改正により引き上げられたもので、令和7年4月1日以後に支払われる通勤手当に適用されます(出典: 国税庁「通勤手当の非課税限度額の改正について」)。
会社から支給される交通費がこの限度額を超えた場合、超えた分は課税対象として給与所得に加算されます。ただし、アルバイトで距離に応じた交通費がそのまま支給されているケースでは、超過することはまれです。
注意: 交通費の支給は法的義務ではない
ひとつ押さえておきたいのは、通勤手当を支給する義務は法律上ありません(出典: 厚生労働省「通勤手当について」(第2回 社会保険料・労働保険料の賦課対象となる報酬等の範囲に関する検討会 資料1))。交通費の支給は会社の就業規則や雇用契約に基づく任意の手当です。「交通費なし」の求人が違法というわけではありません。ただし、雇用契約書に「交通費を支給する」と記載されているのに実際には支払われていない場合は、契約違反にあたります。
この節の参考データ
- 国税庁タックスアンサー No.2582「通勤手当についての税務上の取り扱い」 — 公共交通機関の非課税限度額(月15万円)
- 国税庁タックスアンサー No.2585「マイカー・自転車通勤者の通勤手当」 — 距離別の非課税限度額テーブル
- 国税庁「通勤手当の非課税限度額の改正について」 — 令和7年改正の概要と適用時期
- 厚生労働省「通勤手当について」(検討会資料) — 通勤手当の支給義務が法律上ない根拠
交通費と社会保険料の関係
所得税では非課税の交通費ですが、社会保険料の算定基礎(標準報酬月額)には通勤手当が含まれます。健康保険法では「報酬」を次のように定義しており、通勤手当も「手当」として報酬に該当するためです。
この法律において「報酬」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。
出典: 健康保険法 第3条第5項
標準報酬月額に通勤手当を含める具体的な取り扱いについては、日本年金機構の解説(出典: 日本年金機構「報酬についての基本的な考え方」)も参考になります。
実際の影響はどのくらいか
たとえば、時給1,100円で月80時間働くアルバイトの場合を考えます。
基本給: 1,100円 × 80時間 = 88,000円
交通費: 月5,000円
標準報酬月額の算定基礎: 88,000円 + 5,000円 = 93,000円
標準報酬月額は、この93,000円をもとに等級表で判定します。協会けんぽの等級表(都道府県毎の保険料額表)では、「83,000円以上〜93,000円未満」が標準報酬月額88,000円の等級、「93,000円以上〜101,000円未満」が標準報酬月額98,000円の等級です。交通費5,000円が加わったことで等級が1つ上がり、保険料がわずかに高くなる可能性があります。
ただし、時給制のアルバイトで交通費が少額(月数千円程度)の場合、等級が変わるケースはそれほど多くありません。「大きな影響はないが、ゼロではない」という認識が適切です。
社会保険の加入条件との関係
社会保険の加入条件を判定する際の「月額8.8万円以上」は、所定内賃金で判定します。この判定では残業代・通勤手当・賞与は含めません(出典: 厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」)。つまり、加入条件を判定する段階では交通費は除外されますが、いったん加入した後の保険料計算(標準報酬月額)では交通費が含まれる、という二重構造になっています。
※なお、2026年10月からは月額8.8万円の賃金要件が撤廃され、週20時間以上勤務する短時間労働者は賃金額にかかわらず社会保険の加入対象となる予定です(出典: 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」)。
この節の参考データ
- 日本年金機構「報酬についての基本的な考え方」 — 標準報酬月額に通勤手当を含む根拠
- 厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」 — 加入条件の判定で通勤手当を除外する根拠
- 協会けんぽ「都道府県毎の保険料額表」 — 標準報酬月額の等級表・保険料額の一覧
交通費と最低賃金・扶養判定の関係
最低賃金の算定基礎
最低賃金の算定基礎から通勤手当は除外されます(最低賃金法施行規則第1条)。つまり、「時給 + 交通費」の合計で最低賃金をクリアしている、という計算は認められません。
たとえば、ある都道府県の最低賃金が時給1,050円のとき、時給1,000円+交通費50円相当=1,050円とはなりません。時給そのものが1,050円以上でなければ、最低賃金を下回っていることになります。最低賃金の確認方法について詳しくは「自分の時給は最低賃金以上?都道府県別に確認する方法を解説」を参考にしてください。
123万円の壁(所得税の扶養)
扶養控除の対象になるかどうかは、扶養親族の「合計所得金額が58万円以下」かで判定されます(出典: 国税庁タックスアンサー No.1180「扶養控除」)。給与収入のみの場合、給与所得控除65万円を差し引くため、給与収入123万円以下であれば扶養親族の所得要件を満たします。この判定に非課税通勤手当は含まれません。交通費が所得税法上の非課税所得であるため、そもそも「所得」にカウントされないからです。
なお、以前は「103万円の壁」と呼ばれていましたが、令和7年度(2025年)税制改正で基礎控除・給与所得控除・扶養控除の所得要件がそれぞれ引き上げられ、扶養の壁は123万円に、本人の所得税が非課税になる目安は160万円に変わっています(出典: 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」)。
たとえば年間の給与収入が155万円で、そのうち通勤手当が年6万円(月5,000円×12か月)の場合、所得税の計算では給与収入155万円 − 非課税通勤手当6万円 = 149万円が税法上の給与収入として扱われます。
130万円の壁(社会保険の被扶養者)
一方、社会保険の被扶養者認定における「年収130万円未満」の判定では、交通費を含める扱いが一般的です。これは、社会保険上の「収入」には恒常的に得られるすべての収入が含まれると解釈されるためです。
ただし、具体的な判定基準は加入している健康保険組合によって異なります。協会けんぽでは交通費を含めて判定するのが通例ですが、一部の健保組合では独自のルールを設けている場合があります。扶養内で働きたい方は、ご自身が加入している(または被扶養者になっている)健保組合に確認するのが確実です。
なお、2026年4月から被扶養者認定の判定方法が変更され、実績ではなく「労働条件通知書に記載された所定内賃金」をもとに年収を判定する方式に移行しています。交通費を含める点は変わりませんが、契約上の賃金が基準になるため、突発的な残業で年収が130万円を超えても原則として認定が取り消されない仕組みになっています。
この節の参考データ
- e-Gov「最低賃金法施行規則 第1条」 — 最低賃金の算定基礎から通勤手当を除外する根拠
- 国税庁タックスアンサー No.1180「扶養控除」 — 扶養控除の合計所得金額要件(58万円以下)
- 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」 — 103万円→123万円(扶養)/ 160万円(本人非課税)の改正根拠
- 国税庁タックスアンサー No.2582「通勤手当についての税務上の取り扱い」 — 非課税所得のため所得税の年収判定に含まれない根拠
給与明細で交通費を確認する方法
自分の交通費がどう処理されているかは、給与明細を見れば確認できます。給与明細の読み方全般については「パート・アルバイトの給与明細の見方は?見るべき項目を丸ごと解説」で解説していますが、ここでは交通費に絞ったチェックポイントを整理します。
支給欄で確認するポイント
支給欄に「通勤手当」「交通費」「通勤費」などの項目名で金額が記載されていれば、それが会社から支給されている交通費です。会社によって項目名の表記は異なりますが、よくある表記パターンは次のとおりです。
- 通勤手当
- 交通費
- 通勤費
- 非課税通勤
課税・非課税の区分を確認する
給与明細によっては、支給欄とは別に「課税対象額」や「非課税支給額」の欄があります。ここに交通費の金額が「非課税」として分離されていれば、所得税の計算で正しく除外されている証拠です。
源泉徴収票との突き合わせ
年末に受け取る源泉徴収票の「支払金額」欄には、非課税通勤手当は含まれません。つまり、毎月の給与明細の支給合計を12か月分足した金額と、源泉徴収票の「支払金額」が一致しない場合、その差額が年間の非課税通勤手当に相当します。年収確認の際にはこの点を意識してください。
交通費が支給されていない場合
給与明細に交通費の項目がなければ、交通費は支給されていません。まずは雇用契約書や就業規則で「通勤手当の支給」について定められているか確認してください。契約上は支給ありとなっているのに明細に反映されていない場合は、会社の給与担当者に確認することをおすすめします。
この節の参考データ
- e-Gov「所得税法 第231条」 — 給与等の支払明細書の交付義務の根拠
よくある質問
違法ではありません。通勤手当の支給は法律上の義務ではなく、会社の就業規則や雇用契約によります。「交通費なし」の求人は合法です。ただし、雇用契約書に「交通費を支給する」と記載されているのに払われない場合は契約違反にあたりますので、まずは契約内容を確認してください。
給与所得者の場合、原則として通勤費を個別に経費として差し引くことはできません。ただし「特定支出控除」という制度の対象に通勤費が含まれており、給与所得控除額の2分の1を超える部分について控除が認められます(出典: 国税庁タックスアンサー No.1415「給与所得者の特定支出控除」)。とはいえ、通常のアルバイト収入ではこのハードルを超えることはまず考えにくいため、実質的には難しいのが現状です。
求人に「交通費込み」とある場合、表示されている時給の中に交通費相当額がすでに含まれており、別途支給はありません。この場合、最低賃金との比較では注意が必要です。最低賃金の算定基礎に通勤手当は含められないため、「交通費込み」で表示されている時給から交通費相当分を差し引いた実質時給が最低賃金を下回っていないか確認してください。
勤務日数によります。出勤日が少ない月は実費精算(1回ごとの交通費×出勤日数)のほうが実額に近く、出勤日が多い月は定期代のほうが割安になりやすいです。いずれの方法でも、非課税限度額の範囲内であれば税務上の差はありません。どちらの方式で支給されるかは会社の規定によりますので、就業規則や雇用契約書を確認してください。
直接的には影響しません。交通費は非課税のため所得税は増えず、額面から交通費を除いた部分に対して所得税が計算されます。ただし、社会保険料の算定基礎には含まれるため、間接的にわずかな影響が出る可能性はあります。手取り全体の考え方については「時給から手取りはいくら?パート・アルバイトの手取り額の考え方」で詳しく解説しています。
まとめ
交通費(通勤手当)は「含まれる?含まれない?」の答えが文脈で変わるため混乱しやすい項目ですが、ポイントを整理すると次のようになります。
- 交通費は給与明細の支給欄に載るため、広い意味では給料の一部
- 月15万円以下の通勤手当は所得税が非課税。アルバイトではほぼ全額が非課税に該当する
- 社会保険料の算定基礎(標準報酬月額)には交通費が含まれるため、保険料計算には影響しうる
- 最低賃金の算定基礎には含まれないので、「時給+交通費」で最低賃金クリアとはならない
- 123万円の壁(所得税の扶養)の判定には含まれないが、130万円の壁(社保の被扶養者)では含む場合が多い
- 自分のケースは給与明細の「通勤手当」欄と「非課税支給額」欄で確認できる
交通費の扱いは、一度理解してしまえばそれほど難しい話ではありません。「税金の計算では非課税」「社保の計算では含む」「最低賃金には含まない」の3点を押さえておけば、自分の明細を見たときに正しく判断できるようになります。
参考データ一覧
- 国税庁タックスアンサー No.2582「通勤手当についての税務上の取り扱い」 — 公共交通機関の非課税限度額(月15万円)
- 国税庁タックスアンサー No.2585「マイカー・自転車通勤者の通勤手当」 — マイカー・自転車通勤の距離別非課税限度額
- 国税庁「通勤手当の非課税限度額の改正について」 — 令和7年改正の概要と適用時期
- 国税庁タックスアンサー No.1415「給与所得者の特定支出控除」 — 通勤費を含む特定支出控除の概要
- 日本年金機構「報酬についての基本的な考え方」 — 標準報酬月額に通勤手当を含む根拠
- 厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」 — 社会保険加入条件の判定基準
- 国税庁タックスアンサー No.1180「扶養控除」 — 扶養控除の合計所得金額要件(58万円以下)
- 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」 — 基礎控除・給与所得控除・扶養控除の見直し
- e-Gov「所得税法 第9条」 — 非課税所得の根拠条文
- e-Gov「所得税法 第231条」 — 給与等の支払明細書の交付義務
- e-Gov「健康保険法 第3条」 — 報酬の定義
- e-Gov「最低賃金法施行規則 第1条」 — 最低賃金算定から除外される賃金
- 厚生労働省「通勤手当について」(検討会資料) — 通勤手当の支給義務が法律上ない根拠
- 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」 — 2026年10月からの賃金要件撤廃
交通費を含めた支給額から手取りの目安まで、時給計ちゃんならまとめて確認できます。