試用期間中に時給を下げるのは合法?最低賃金との関係と上限を解説

「時給計ちゃん」運営チーム。アルバイトやパートで働く方に向けて、複雑な給与計算をサポートできるツールの企画と情報発信を行っています。労働基準法などに関する基本的なルールを分かりやすく解説します。
アルバイトやパートの求人を見ていると、「試用期間中は時給○○円」と本採用時より低い金額が書かれていることがあります。筆者自身もアルバイトの面接時に「最初の3か月は試用期間なので時給が少し低くなります」等と説明された経験があります。そのときは「そういうものなのか」と深く考えずに承諾しましたが、いざ働き始めてから「この金額って本当に問題ないのだろうか」と気になった記憶があります。
結論からいうと、試用期間中の時給を本採用時より低く設定すること自体は、法律で禁止されていません。ただし、最低賃金を下回る時給は原則として違法です。最低賃金より低くするには、都道府県労働局長の「減額特例許可」という特別な許可が必要で、許可なしに最低賃金未満の時給で働かせることはできません。
この記事では、試用期間中の時給減額が合法になる条件と違法になる条件、最低賃金との関係、減額の上限、求人応募前に確認すべきポイントまでを整理します。
この記事のポイント
- 試用期間中の時給減額は、雇用契約書や労働条件通知書に明記されていれば、それ自体は違法ではない
- ただし最低賃金を下回る減額は原則違法。最低賃金未満にするには「減額特例許可」が必要で、許可なしの減額は認められない
- 求人に応募する前・雇用契約を結ぶ前に、試用期間中の時給・期間・本採用後の時給を書面で確認することが最も確実な自衛策
- 試用期間中の時給が低いのは違法?結論から解説
- 最低賃金と試用期間の関係 — 減額特例許可とは
- 減額特例許可の仕組み
- 都道府県別の「減額特例許可時の下限」はいくら?
- 減額特例許可は実際にはほとんど使われていない
- 試用期間中の時給、実際にいくら下がる?具体例で確認
- ケース1: 本採用時給1,300円 → 試用期間1,250円(東京都)
- ケース2: 本採用時給1,200円 → 試用期間1,150円(東京都)
- ケース3: 本採用時給1,100円 → 試用期間1,050円(福岡県)
- 試用期間中の時給で確認すべき4つのポイント
- ポイント1: 試用期間の長さ
- ポイント2: 試用期間中の時給と本採用後の時給
- ポイント3: 最低賃金との比較
- ポイント4: 本採用への移行条件
- よくある質問
- 関連記事
- まとめ
試用期間中の時給が低いのは違法?結論から解説
試用期間中に本採用時より低い時給が設定されていること自体は、法律上禁止されていません。試用期間は、雇い主と労働者がお互いの適性を見極めるための期間として広く使われており、その間の労働条件を本採用時と変えること自体は認められています。
ただし、試用期間中の時給減額が合法であるためには、次の2つの条件を満たしている必要があります。
- 最低賃金以上であること — 試用期間中の時給が、自分の働く都道府県の最低賃金を下回っていないこと
- 書面で明示されていること — 試用期間中の時給が、雇用契約書や労働条件通知書にきちんと記載されていること
この2つのうち、どちらかが欠けていると問題になります。
最低賃金を下回る時給は、後述する「減額特例許可」がない限り、最低賃金法第4条に基づき違法です。また、試用期間中の時給を口頭でしか伝えていない場合は、労働基準法第15条が定める「労働条件の明示義務」に違反する可能性があります。
以下の表で、自分の状況が合法か違法かを判断できます。

つまり、最低賃金以上で、書面にも書いてあるなら合法。逆に、最低賃金を下回っていて許可もないなら違法です。まずはこの基本を押さえておきましょう。
この節の参考データ
- e-Gov「最低賃金法 第4条」 — 最低賃金を下回る賃金の無効と最低賃金額の自動適用の根拠
- e-Gov「労働基準法 第15条」 — 労働条件の明示義務の根拠
最低賃金と試用期間の関係 — 減額特例許可とは
試用期間中であっても、最低賃金は原則として適用されます。「試用期間だから最低賃金より低くても仕方ない」と思われがちですが、それは誤解です。
ただし、最低賃金法第7条には「減額の特例許可」という制度があります。これは、一定の条件のもとで最低賃金より低い賃金を支払うことを認める仕組みです。試用期間中の者は、この制度の対象の一つとされています。
減額特例許可の仕組み
減額特例許可とは、簡単にいうと「特別に最低賃金より低くしてもいいという許可」です。この許可を得るには、雇い主(使用者)が都道府県労働局長に申請して、事前に許可を受けなければなりません。労働者個人が申請するものではなく、会社側が行う手続きです。
制度の概要をまとめると次のとおりです。
ここで大切なのは、減額特例許可があっても無制限に下げられるわけではないという点です。最低賃金法施行規則により、減額できる幅は最大20%と定められています。つまり、どれだけ下げても最低賃金の80%が下限になります。
都道府県別の「減額特例許可時の下限」はいくら?
具体的な金額感をつかめるように、主要都道府県の最低賃金と、減額特例許可を受けた場合の下限額(最低賃金の80%)を並べてみます。
※ 以下の金額は2025年度(令和7年度)の最低賃金に基づく計算です。最低賃金は毎年改定されるため、最新の金額は必ず厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」でご確認ください。
※ 80%の計算で1円未満の端数が生じる場合は切り上げています。
たとえば東京都の場合、減額特例許可を受けていたとしても、時給981円を下回ることはできません。
減額特例許可は実際にはほとんど使われていない
制度としては存在するものの、減額特例許可を実際に取得している職場は非常に少ないのが実情です。
※ 減額特例許可の取得件数に関する公式統計は公表されていませんが、申請手続きの煩雑さや許可期間の制限から、アルバイト・パートの採用で利用されるケースはまれです。
そのため、多くの職場では試用期間中でも最低賃金がそのまま下限になります。もし試用期間中の時給が最低賃金を下回っている場合は、「減額特例許可を取得していますか?」と確認する価値があります。
この節の参考データ
- e-Gov「最低賃金法 第7条」 — 減額の特例許可制度の根拠
- e-Gov「最低賃金法施行規則 第3条〜第5条」 — 減額特例許可の手続き・減額率上限(20%)の根拠
- 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」 — 都道府県別の最低賃金額
- 厚生労働省「最低賃金の減額の特例許可申請について」 — 減額特例許可制度の案内・申請書様式
試用期間中の時給、実際にいくら下がる?具体例で確認
試用期間中にどの程度時給が下がるかは、法律で一律に決まっているわけではなく、職場ごとに異なります。求人を見ていると、本採用時の時給から20〜50円程度低く設定されているケースや、試用期間中は最低賃金ぴったりに設定されているケースが多く見られます。
ここでは3つのケースを取り上げて、合法・違法の判断と月収への影響を具体的に確認します。
※ 以下の金額は2025年度の最低賃金に基づく例です。最新の金額は厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」でご確認ください。
ケース1: 本採用時給1,300円 → 試用期間1,250円(東京都)
最低賃金との比較から確認します。
試用期間中の時給: 1,250円
東京都の最低賃金: 1,226円
→ 1,250円 ≥ 1,226円 → 最低賃金以上
最低賃金を上回っており、雇用契約書に明記されていれば合法です。
月収への影響はどうでしょうか。たとえば月80時間勤務の場合、試用期間中と本採用後の月収差は次のようになります。
月収差 = (1,300円 - 1,250円) × 80時間 = 4,000円/月
時給50円の差は、月80時間働くと月4,000円の差になります。3か月の試用期間なら合計12,000円の差です。金額として小さくはないので、試用期間の長さと合わせて事前に確認しておきたい情報です。
ケース2: 本採用時給1,200円 → 試用期間1,150円(東京都)
試用期間中の時給: 1,150円
東京都の最低賃金: 1,226円
→ 1,150円 < 1,226円 → 最低賃金未満
試用期間中の時給が最低賃金を下回っています。減額特例許可がない限り違法です。
本採用時の時給1,200円も東京都の最低賃金(1,226円)を下回っているため、このケースでは試用期間に限らず時給設定そのものに問題がある可能性があります。自分の都道府県の最低賃金を確認しましょう。
ケース3: 本採用時給1,100円 → 試用期間1,050円(福岡県)
試用期間中の時給: 1,050円
福岡県の最低賃金: 1,057円
→ 1,050円 < 1,057円 → 最低賃金未満
わずか7円の差ですが、最低賃金を下回っています。減額特例許可がない限り違法です。
このように、最低賃金に近い時給帯では数十円の減額でも最低賃金を割り込む可能性があります。本採用時の時給が最低賃金ぎりぎりの場合は、試用期間中の減額幅に特に注意が必要です。

この節の参考データ
- 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」 — 具体例で使用した都道府県別最低賃金の出典
試用期間中の時給で確認すべき4つのポイント
求人に応募する前や、雇用契約を結ぶ前にチェックしておきたいポイントを4つにまとめます。すでに働き始めている人は、手元の雇用契約書や労働条件通知書を見返してみてください。
ポイント1: 試用期間の長さ
試用期間の長さは1〜3か月が一般的です。法律上「試用期間は○か月以内」という上限規定はありませんが、不合理に長い試用期間は裁判で無効とされる可能性があります。6か月以上の試用期間が設定されている場合は、その理由を確認しておくと安心です。
ポイント2: 試用期間中の時給と本採用後の時給
試用期間中の時給と、試用期間終了後(本採用時)の時給の両方が書面に記載されているかを確認します。雇い主は、労働基準法第15条により、賃金などの労働条件を書面で明示する義務があります。「試用期間中は時給が低い」と口頭で言われただけで、書面に記載がない場合は確認を求めましょう。
ポイント3: 最低賃金との比較
試用期間中の時給が、自分が働く都道府県の最低賃金以上かどうかを確認します。最低賃金は毎年10月ごろに改定されるため、求人を見る時期によっては改定前の金額が掲載されている可能性もあります。最新の最低賃金は厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」で確認できます。
最低賃金の確認手順やよくある注意点については、「自分の時給は最低賃金以上?都道府県別に確認する方法を解説」でくわしく整理しています。
ポイント4: 本採用への移行条件
試用期間が終了した後に自動的に本採用になるのか、それとも別途判断があるのかも確認しておきたいポイントです。試用期間終了後に「やっぱり本採用しない」と言われるトラブルを防ぐためにも、雇用契約書に本採用の基準が記載されているかを見ておきましょう。
なお、試用期間開始から14日以内であれば、雇い主側は解雇予告なしに解雇できるという特例があります(労働基準法第21条)。14日を超えた後は、通常の解雇と同じく30日前の予告か、30日分以上の解雇予告手当が必要です(労働基準法第20条)。
この節の参考データ
- e-Gov「労働基準法 第15条」 — 労働条件の明示義務の根拠
- e-Gov「労働基準法 第20条・第21条」 — 解雇予告および試用期間中の特例の根拠
- 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」 — 最低賃金の確認先
よくある質問
雇用契約書に「試用期間後は時給○○円」と明記されている場合は、試用期間終了後に契約どおりの時給へ改定されるべきです。明記がない場合は、そもそも「試用期間後に時給が上がる」という契約内容になっているかの確認が必要です。まず職場の担当者に確認し、それでも改善されない場合は、労働基準監督署に相談できます。
改定後の最低賃金が適用されます。試用期間中であっても、新しい最低賃金を下回る時給は違法です。最低賃金の改定は毎年10月ごろに行われるため、改定時期をまたぐ試用期間の場合は、改定後に時給が据え置かれていないか注意が必要です。
聞いてまったく問題ありません。試用期間の有無、期間の長さ、試用期間中の時給は、働く条件を決めるうえでの重要事項です。面接時に口頭で確認するだけでなく、雇用契約書で書面として受け取ることをおすすめします。
試用期間中でも退職は可能です。期間の定めのない雇用契約(一般的なアルバイト・パートの多くが該当)であれば、民法第627条により、退職の申し出から2週間が経過すれば退職できます。
なお、使用者(雇い主)側から見ると、試用期間開始から14日以内であれば解雇予告なしに解雇できる特例があります(労働基準法第21条)。ただしこれは使用者側の規定であり、労働者が退職する場合の話ではありません。
法律上の定義は異なります。「試用期間」は雇い主と労働者がお互いの適性を見極める期間として位置づけられ、「研修期間」は業務に必要なスキルを身につけるための期間です。ただし、実務上はこの2つが混同されているケースも少なくありません。
どちらの名目であっても、最低賃金は適用されます。「研修中だから最低賃金より低くても仕方ない」ということはなく、減額特例許可がない限り最低賃金未満の時給は違法です。また、いずれの場合も雇用契約に基づく労働条件の書面明示義務があります。
出ます。試用期間中であっても、1日8時間超や週40時間超の残業代(25%以上の割増)、22時から翌5時の深夜割増(25%以上の割増)は、通常の労働者と同じルールで適用されます。残業代の計算方法については「アルバイトの残業代はどう計算する?」でくわしく解説しています。
この節の参考データ
- e-Gov「労働基準法 第21条」 — 試用期間中の解雇予告特例の根拠
- e-Gov「民法 第627条」 — 期間の定めのない雇用契約における退職の根拠
関連記事
試用期間中の時給が確認できたら、最低賃金の都道府県別一覧や、残業代・月収の計算方法もあわせて確認しておくと安心です。また、試用期間中でも有給休暇の起算日は入社日から始まるため、有給の条件も知っておいて損はありません。
まとめ
この記事の内容を整理します。
- 試用期間中の時給減額は、書面で明示されており最低賃金以上であれば合法。法律で禁止されているわけではない
- 最低賃金を下回る減額は原則違法。最低賃金未満にするには都道府県労働局長の「減額特例許可」が必要(最低賃金法第7条)
- 減額特例許可の減額上限は20%(最低賃金の80%が下限)。ただし許可を取得している職場はほとんどない
- 求人応募前・契約前に「試用期間中の時給」「期間」「本採用後の時給」を書面で確認するのが最も確実な自衛策
- 不安がある場合は労働基準監督署や労働条件相談ほっとライン(0120-811-610)に相談できる
試用期間中の時給が適正かどうか確認したい方は、まず「自分の時給は最低賃金以上?都道府県別に確認する方法を解説」で自分の都道府県の最低賃金を確認してみてください。試用期間中の時給でどのくらいの月収になるかを逆算したい場合は、「月収10万円・15万円を稼ぐには何時間必要?」も参考になります。
参考データ一覧
- e-Gov「最低賃金法(昭和34年法律第137号)」 — 最低賃金制度の根拠法令(第4条・第7条)
- e-Gov「最低賃金法施行規則」 — 減額特例許可の手続き・減額率上限の根拠(第3条〜第5条)
- e-Gov「労働基準法」 — 労働条件の明示義務(第15条)、解雇予告の特例(第20条・第21条)
- 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」 — 都道府県別の最低賃金額・発効日一覧
- 厚生労働省「最低賃金の減額の特例許可申請について」 — 減額特例許可制度の案内
- 厚生労働省「全国労働基準監督署の所在案内」 — 最寄りの労働基準監督署を調べるページ
- e-Gov「民法 第627条」 — 期間の定めのない雇用契約における退職の根拠
- 厚生労働省「労働条件相談ほっとライン」 — 平日夜間・土日祝も対応の電話相談窓口(0120-811-610)
時給と勤務時間を入力するだけで、月収の目安をすぐ確認できます。試用期間中の時給でも本採用後の時給でも、それぞれの月収を比べてみましょう。